マイクロバイオームとは


人間はからだの内外で微生物と深く関わり、微生物の存在は欠かすことができません。

●微生物と共生してきた人類

歴史をふりかえるとつい最近まで人類は、私たちの住む環境やからだの中にいる微生物の存在を知りませんでした。食物が腐敗すると食べられないことや、汚染された水がからだに毒であることは経験上知っていましたが、それらがなぜ起こるのかを知りませんでした。中世に大流行した感染病ペストは微生物が原因ですが、当時は神の罰や呪いなどとして畏れられ科学的に捉えることはありませんでした。
100年ほど前に顕微鏡が発見されたことで、これまで目に見えなかった微生物をようやく見ることができるようになり、感染症が微生物により引き起こされることが明らかになりました。そして2000年代に微生物の詳細な分析手段ができるようになり、微生物への理解が大きく進歩します。2015年頃には微生物の多様性と人間の健康とのかかわりが解明されはじめました。2000年以前には7000種類ほどとされていた細菌は、今では1億種を超えるかもしれないといわれ、その研究は日々進められています。現在、微生物、細菌、ウィルスをまとめて「マイクロバイオーム」と呼ばれています。

●身の回り、からだの中に共生するマイクロバイオーム

マイクロバイオームは空気中、地中、水中、地表面、動物の体表面、体内とあらゆる場所に存在します。マイクロバイオームはその環境によってさまざまで、同じ場所であっても天候や季節によって違います。人体には1万種類、総数では人間の細胞数の約10倍のマイクロバイオームが存在し、その重さは体重の3%を占めるともいわれます。生命活動を営む上で自分自身のDNAの働きよりもマイクロバイオームの働きの影響のほうが大きいともいわれ始めています。
人間は個々でそれぞれに違う種類のマイクロバイオームをもっていて、季節や時間、その時の状況によってもマイクロバイオームは違います。例えば体表のマイクロバイオームは汗をかいているときなどに種類、量ともに増加します。人間は胎児のときはほぼ無菌状態ですが、出産時に母親の産道でマイクロバイオ―ムをもらい生後数日の間に腸で増殖させます。からだの中でマイクロバイオームが多くいるのは、胃腸、口腔、皮膚、気道、泌尿生殖器で、外部との直接接触、体外からの取り入れ物との接触が多いところです。私たちはこれらの体表や体内に棲むマイクロバイオームと調和しながら生きていて、相互のバランスで健康を保ち、バランスが崩れると不調をきたし、病気につながっていくといわれています。

参考:「マイクロバイオームの世界」株式会社紀伊国屋書店

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